特別な日なら…
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N viewpoint


「あの赤だるまめであります!全く誰のために!」
「いーから、ギロロの行き先、心当たりないの?」
 オーバーに怒りの表現をあたしに見せて、ボケガエルの魂胆は丸見え。作戦が裏目に出てしまったのだから。でもね、あたしも共犯。アンタを責める気ないから。

「ヤツがぷいっといなくなってしまうのは、ソルジャー魂が疼くときであります。やけっぱちで傷心の伍長の行動は想像できないであります」
「しょ、傷心って何によ。バカなこと言ってないで手分けして探しましょ。もうすぐ夜よ」
 ギロロのフライングボードがなくなっていることに気付いて、やはり行き先は無限に広いことを知る。でも諦めてやんない。ギロロのためにここまでしたんだから。


 この始まりは、あたしだった。部屋の整理をしていて、昔の日記帳を見つけた。何年前かの今日、ある重大事件がおきたことを思い出したのだ。それはあたしが初めてギロロと出会った日。
 古本を束ねる手伝いをさせてたボケガエルに気付かれ、あたしは提案をしたのだ。
『ねえ、今夜お祝いにしない?』と。
 ボケガエルは聞かなくても自分の誕生日をアピールする幼稚さがあるから分かり易いけど、そう言えばギロロのお祝いはしたことがない。アイツはあたしの誕生日に、命がけでプレゼントをしてくれたのに、あたしはアイツの誕生日すら知らない。
 ボケガエルは、しばらく思案してにんまり微笑んだ。悪巧みとも言えないそれだったけど、『いいでありますな』と同意してくれた。
『我輩はケロン星の郷土料理を作るでありますよ』の案にはある制限をつけた。地球の食材を使うこと。それだけ守ってくれたら、キッチンの爆発の心配はないかな。
 話はあっという間に他のメンバーに広がった。みんなそれなりに動き始めた。クルル以外は。
 タママは桃華ちゃんを頼って最新式のテントとか、冬樹はギロロが喜びそうな本を買うとか、ドロロと小雪ちゃんは、無農薬有機栽培のオイモとか。モアちゃんはあのギロロにアクセサリーを選ぶんだって。
 ギロロと出会った記念日は、一大イベントになりつつあった。
 その上、ボケガエルが案を練ったわけよ。ギロロは今日の日を知っているわけでもないし、心待ちにしているわけでもない。普通に驚くわけはない。ならば、ギロロに意地悪をして落ち込ませておいてから、盛大にお祝いしようって。
 そのパターン、あたしにもしたでしょう。
 まあ、いいわ。でもギロロが落ち込むことって何よ?でボケガエルが提案したのが『我輩と夏美殿が仲良くすること』だったのだ。
『はあ?ってなんで。それでギロロが落ち込むわけ?』
『…ごほっ。夏美殿もギロロと変わらぬ鈍感でありますな!』
 あたしの怒りの導火線は超短いのよ。ボケガエルを睨みつけると、苦し紛れに言い訳した。
『ほら、ギロロは侵略命だから、ペコポン人と馴れ合うのは嫌いでありますゆえ』

 ふん、大義名分の理由だわ。ボケガエルにとっても、そしてあたしにとってもね。



continue

2006/04/16