特別な日なら…
2 ![]() N viewpoint 「あの赤だるまめであります!全く誰のために!」 「いーから、ギロロの行き先、心当たりないの?」 オーバーに怒りの表現をあたしに見せて、ボケガエルの魂胆は丸見え。作戦が裏目に出てしまったのだから。でもね、あたしも共犯。アンタを責める気ないから。 「ヤツがぷいっといなくなってしまうのは、ソルジャー魂が疼くときであります。やけっぱちで傷心の伍長の行動は想像できないであります」 「しょ、傷心って何によ。バカなこと言ってないで手分けして探しましょ。もうすぐ夜よ」 ギロロのフライングボードがなくなっていることに気付いて、やはり行き先は無限に広いことを知る。でも諦めてやんない。ギロロのためにここまでしたんだから。 この始まりは、あたしだった。部屋の整理をしていて、昔の日記帳を見つけた。何年前かの今日、ある重大事件がおきたことを思い出したのだ。それはあたしが初めてギロロと出会った日。 古本を束ねる手伝いをさせてたボケガエルに気付かれ、あたしは提案をしたのだ。 『ねえ、今夜お祝いにしない?』と。 ボケガエルは聞かなくても自分の誕生日をアピールする幼稚さがあるから分かり易いけど、そう言えばギロロのお祝いはしたことがない。アイツはあたしの誕生日に、命がけでプレゼントをしてくれたのに、あたしはアイツの誕生日すら知らない。 ボケガエルは、しばらく思案してにんまり微笑んだ。悪巧みとも言えないそれだったけど、『いいでありますな』と同意してくれた。 『我輩はケロン星の郷土料理を作るでありますよ』の案にはある制限をつけた。地球の食材を使うこと。それだけ守ってくれたら、キッチンの爆発の心配はないかな。 話はあっという間に他のメンバーに広がった。みんなそれなりに動き始めた。クルル以外は。 タママは桃華ちゃんを頼って最新式のテントとか、冬樹はギロロが喜びそうな本を買うとか、ドロロと小雪ちゃんは、無農薬有機栽培のオイモとか。モアちゃんはあのギロロにアクセサリーを選ぶんだって。 ギロロと出会った記念日は、一大イベントになりつつあった。 その上、ボケガエルが案を練ったわけよ。ギロロは今日の日を知っているわけでもないし、心待ちにしているわけでもない。普通に驚くわけはない。ならば、ギロロに意地悪をして落ち込ませておいてから、盛大にお祝いしようって。 そのパターン、あたしにもしたでしょう。 まあ、いいわ。でもギロロが落ち込むことって何よ?でボケガエルが提案したのが『我輩と夏美殿が仲良くすること』だったのだ。 『はあ?ってなんで。それでギロロが落ち込むわけ?』 『…ごほっ。夏美殿もギロロと変わらぬ鈍感でありますな!』 あたしの怒りの導火線は超短いのよ。ボケガエルを睨みつけると、苦し紛れに言い訳した。 『ほら、ギロロは侵略命だから、ペコポン人と馴れ合うのは嫌いでありますゆえ』 ふん、大義名分の理由だわ。ボケガエルにとっても、そしてあたしにとってもね。 |