特別な日なら…
9 ![]() N viewpoint 障害の多い恋になる。今は全く感じない不安は、いつか大きくなるに違いない。だって、あたしたちは住む世界が違う。 考えたくないのに、女の子ってバカよね。いつも先回りして、恋の行方を確かめてしまう。 「でも、あたしが好きじゃなくなったら、ちゃんと言って」 これは違う意味も含んでいる。いつか、自分の星に帰るときがあるなら、別れなきゃいけない時が来たら教えてほしい。黙って消えたりしないで。 あたしの真剣さにギロロも迫るものを感じたのか、ギロロはあたしの首に短い腕を回した。彼の身体も腕も小さいけど、しっかり包み込まれて抱きしめられている感じがした。 「ギ、…ロロ。…あたしを…」 「離さない。俺はおまえのそばにいる」 あたしは泣いて、ギロロの胸にすがっていた。暖かくしっかりとしたギロロの言葉。まるで彼の胸と同じ。安心と幸せで包まれる。 耳元にギロロの体温を感じた。キスされている? 「くすぐったいよ、ギロロ」 「そ、そうか。すまん」 でもあたしを放してくれない。今度はあたしが彼の頬にキスをした。 「うわっっ」と派手にギロロが驚いて、あたしを見る。というより睨んでいる。真っ赤になって目を丸くしている。 「何よ。自分もしたくせに」 「そっそれはだなっ」 ギロロは焦ってあたしの顔を確かめに覗き込む。いきなり想いを通じ合わせた恋に戸惑って、ギロロは子どもをあやす父親みたいよ。 怒った風に視線を外したあたしに、恋の優先権があるみたい。でもね、違うよ。アンタに負けないほど、ギロロが好きよ。明日になったらきっとわかる。闇の中で手探りで見るより、アンタに恋しているあたしがよく見えるはずよ。 「もうしないもーん」 「いやっ、それは困る!というより、してくれ!…あ…」 あたしがすまして言うと、ギロロはまたボロが出る。今夜だけ優越感に浸らせて。ギロロから告白をしたんだよ。 「はい、わかったよ」 あたしはギロロを抱きしめ、頬にキスをした。 あたしたちが持っていた送受信機らしい箱が黄色に光った。闇の中だったから、その瞬間に二人で気付いた。 黄色は初めての色ね。ん?黄色? 一拍置いて、あたしたちは顔を見合わせた。そして悟った。絶望に近い顔だった。 |